2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- other side Nine --**
俺の問いに雪ちゃんは、はぁ……とか細くため息をついた。
それが雪ちゃんの答えなのか?
そのため息の雰囲気から察するに雪ちゃんはもうすでに泣いているみたいだった。
「だいぶ前にその彼……出張で東南アジアの国を……何ヵ国も渡ったそうなんです。あたしも栞ちゃんも……会社に入ってから間もなくの……頃でした」
雪ちゃんは言葉に詰まりながら俺に説明してくれた。
――……まさか。
「…………………エイズ……?」
俺はワナワナと震える唇を一生懸命動かして、小さな声でそう聞いた。
「…………そうかもしれません」
そう言って、雪ちゃんは電話の向こうで泣いた。
「……嘘だろ……?」
やっと一言俺の口から出たのは、そんな言葉だった。
「……明日から仕事だから、何かしらの報告があると思います。それまではあたしには何とも……」
「あ……、ああ……」
俺は気の抜けたサイダーのように床にへなへなと崩れ落ちた。