2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- Ten --**
ワタシはそう冷たく言い放った。だってこうでもしなきゃ自分が保てない。
気丈に振る舞ってはいるけど、本当にこうでもしないとこれから聞くことをちゃんと受け止められそうにない。
1ヶ月あまり見ていなかったあの人の顔……少し痩せたあの人を見ると、近い将来のワタシの姿が容易に想像できて心苦しいけど、ワタシは出来る限り気丈に振る舞った。
「……栞」
「名前で呼ばないで」
あの人の最初の言葉はワタシの名前。それも、今にも泣きそうなほどか弱い声で呼んだ。
でもワタシは即座に跳ね返した。
――直貴以外に名前で呼ばれなくない……。
ここまで来てもなお、ワタシは直貴を想っている。
こんな往生際の悪い女、ほかを探したっていないかもしれない。
「すまない。し……、君は覚えているかな、僕の出張の行き先」
あの人は、自分の手を見つめながらポツリポツリと話しはじめた。
「覚えているわ。東南アジアの国々を渡って日本の市場を広げる1ヶ月くらいの出張よね」