2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- Ten --**
「……ごめん」
ワタシの口から出た、精一杯の謝罪の言葉。
「どうして君が謝るんだ?悪いのは全部僕だ。むしゃくしゃして女を抱いて、病気をうつされた。それを僕は君にうつした。知らなかったじゃ済まされないことだ」
ワタシの耳に、あの人の息と口の動きと言葉が同時に届く。
顔が見えないあの人は、その雰囲気から泣いていることが伝わってきた。
「こんな金で罪滅ぼしには到底ならないけど、君には両親も頼れる親戚もいない。両親の遺産は親戚中をたらい回しにされるたびに取られてなくなった」
「う……、うん……」
あの人は、ワタシを抱きしめたまま静かに言った。
「君にもう一度、家族を作ってあげたかったけど、ごめん」
あの人は震える口で謝る。
「もう……いいよ」
ワタシの精一杯の感謝の言葉。
素直に“ありがとう”と言えないワタシの、これが本当に精一杯の感謝の言葉。
この時、ワタシとあの人は病気という同じ“孤独”でつながった、それを感じた。