2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- another side Ten --**



手には一応、お見舞いらしく適当に選んだフルーツバスケットと小さな花束。


どこからどう見たって、あたしはお見舞いに来た人にしか見えないでしょう。


あたしは意を決して病院に入り、受付で聞いた長坂さんの病室を目指す。


長坂さんに会ったらまず最初に何を聞こうかなんて、そんなのは考えていなかった。


だけどあたしは、長坂さんに会いに来ずにはいられなかった。


栞ちゃんのため。
ヒデくんのため。
桃原さんのため。


……たぶん一番は、あたしのためだ。


ちょうど長坂さんの病室を見つけて入ろうとしたとき、中から出てた女性とけっこうな強さでぶつかってしまった。


一瞬のことで、あたしはその人に謝ることもできなかった。


でも“ごめんなさい……”と謝った声と、少し見えたその顔から、栞ちゃんだと分かった。


栞ちゃんはあたしに気づかないまま、泣きながら風を切るようにその場から離れていった。


「……栞ちゃん……!」
 

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