2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- another side Ten --**



あたしは花束やらフルーツバスケットやらをボタボタ落としながら栞ちゃんの名前を呼んだ。


でも栞ちゃんは、あたしの声にも立てた物音にも反応しないで廊下を歩いていく。


「誰かいるの?」


すると、病室の中から聞き慣れた長坂さんの声がした。


あたしは、泥棒に入ったわけでもないのにあたふたしてしまった。


病室のドアを開けるべきか、栞ちゃんを追いかけるべきか……。


「向井……さん?」


また中から長坂さんの声がした。あたしの名前を呼ばれては、もう中に入るしかないという雰囲気。


『ガラガラ……』


あたしは、落ちたものを拾おうとする格好のままドアを開けてしまった……。


「やっぱり向井さんだったか。今までね、小峯さんが来ていたんだよ。さあ、入って」

「……はい」


あたしは急いで落ちたものを拾って、恐る恐る中へ足を踏み入れた。


「ぶ……部長、これ、落ちちゃいましたけどお見舞いです。あの、それだけですので」
 

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