2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- another side Ten --**



背中を不吉にゾワゾワさせる、この妙な緊張感。
ベッドに寝ている長坂さん。


あたしは変に緊張してしまって、お見舞いの品をベッドの脇の机に置くと帰ろうとしてしまった。


――こんなはずじゃ……。


緊張しながらも、あたしの頭は冷静に自分を“バカじゃないの”と言う。


そんなのは分かってる。
分かってるけど、予想外の展開すぎてついていけなかった。


「ありがとう、向井さん」

「いえ……」


長坂さんは、本当に落ち着いた様子であたしの行動の一部始終を見ている。


「……向井さん、僕に話があるんじゃないの?」

「……」


長坂さんは、病室のドアまで行ったあたしを呼び止めた。


あたしは振り向くことも何かを言うこともできなくて、その位置で固まってしまった。


「会社では、今頃僕は死んだとか自殺したとか……エイズだとか。そう言われているのかな」


長坂さんの口調は、会社にいた頃と違って穏やかで丸くて刺がなかった。
 

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