2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- another side Ten --**
「向井さん」
「はい」
長坂さんは、あたしの背中に声をかける。
「実は僕、小峯さんと不倫をしていたんだ」
「……知っています」
あたしはうつむいたまま、長坂さんにそう言った。
「それなら分かるよね?会社の噂は本当だ。違うのは、僕はまだ生きていることだけだ」
長坂さんは、あたしの背中に優しく語りかける。
それがあたしには、たまらなく嫌で苦しくて……。
「なんで部長はそんなに穏やかでいられるんですか!栞ちゃんは、栞ちゃんは!」
あたしは長坂さんに大声で怒鳴ってしまった。
だって、なんでこんなに落ち着いているの?
なんてこんなに淡々と……他人事みたいに話すの?
栞ちゃんの気持ちくらい考えられないの?
桃原さんに……なんて言ったらいいか分かんないよ……。
「うわぁぁぁーーーん!」
あたしはその場に崩れ落ちた。
声にならない声を上げて、泣き叫べるだけ叫んだ。