2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- another side Ten --**



それからあとのことは、あたしはさっぱり覚えていない。


たぶん病院から逃げて、桃原さんとヒデくんに泣きながら電話をしたんだと思う。


ヒデくんは、あたしの一報を聞いて抜け出せないはずの仕事場――高校からわざわざ駆けつけてくれた。


ヒデくんは長坂さんが入院している近くの高校で先生をしている。


本当は桃原さんと一緒に先生になりたかったけど、桃原さんには事情があって引っ越し屋さんになったと前に聞いたことがあった。


あたしが道ばたで泣き崩れているのをヒデくんが見つけてくれて、少しの間だけではあったけど、落ち着かせるためにあたしの手を握ってくれていた。


桃原さんはあたしの電話を聞いて「仕事を早退して栞を探す」と言ってくれた。


あたしは栞ちゃんが行きそうなところなんて知らなかった。


あたしには、ヒデくんと桃原さんしか頼れる人が思いつかなかったんだ。


ただ必死に栞ちゃんの無事を祈ることくらいしか、あたしにはできなかった……。
 

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