2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- Eleven --**
「聞いてたでしょ?この前の話。直貴はね、ワタシのこと“絶対死なせない”って言ってくれたんだよ」
「ほんとにいいお兄さんだね、直貴は。あなたの夢を継いで引っ越し屋さんになってるよ」
地面に向かってブツブツ何かを言う女。
端(ハタ)から見れば、ワタシなんて不審者で、通報されてもおかしくないだろう。
でも幸運なことに、この川原には犬の散歩をする人も近くを通りかかる人もいなかった。
直貴が言っていた“冬は忘れられる場所だから”の意味が少し分かった気がした。
そこへ、全身が真っ黒で足の先だけ白い靴下を履いたみたいな1匹の野良猫が現れて、泣いているワタシのそばにじっと座って動かなくなった。
人間慣れしているのか、ワタシに警戒することもなく、ただじっと川の流れを見ていた。
少し話し相手がほしいと思ったワタシは、その猫を仮に“ソックスちゃん”と名付けて話しかけてみることにした。
そばに猫がいれば、不審者だと疑われる確率も少しは下がるかと思って。