2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- Eleven --**
「栞!」
その人は土手を駆け下りながらワタシの名前を大声で呼ぶ。
もう絶対に会わない、絶対に忘れる、そう心に言い聞かせた人――直貴だった。
「……探したんだぞ」
ワタシの正面に回り込むと、直貴はワタシの肩をつかんで言った。
怒り、安堵感、同情、愛情……、どんな気持ちで言ったのかは計り知れないけど、直貴の声のトーンはすごく低かった。
ソックスちゃんは直貴が走ってくるときにはもう、ベンチから飛び下りて逃げてしまっていた。
ここにいるのは、ワタシと直貴。2人だけになってしまった。
「……頼んでない」
ワタシは直貴と目を合わせずに小さな声で言った。
「ごめん。俺は自分のことしか考えてなかった……」
直貴はワタシの肩をつかむ手の力を緩めて、声の感じを柔らかくして、そう言った。
「……謝られたって……ワタシには身に覚えのないことだし……」
直貴の声を聞いて安心したのか、ワタシはまた、ボロボロと泣いていた。