2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- Two --**
最後の荷物をトラックに積み終わって、引っ越し屋さんがお会計をしにまた部屋に上がったときだった。
「小峯栞さん、あんた、昨日のビンタは効いたよ」
それまで被(カブ)っていた会社の帽子を取りながら、その引っ越し屋さんは言った。
「……」
ワタシは驚きすぎて腰が抜けそうになった。
「朝起きたら腫れてるんだもん、驚いたなぁ。あんた、薄情者で泣き虫で、気が強くて力持ちなんだな。タチ悪いにもほどがあるってもんだ」
それから昨日のようにケタケタ笑った。
「……誰?」
やっとのことでワタシの口から出た言葉は、昨日と同じセリフだった。
「誰って、俺は『ニコニコ引っ越しセンター』の社員。見て分かんないの?おまけに目も悪いんだ、あんた」
とうとうその引っ越し屋さんは、お腹を抱えて笑いだした。
――前言撤回だ。さっきまで思ってたことは事実無根。
昨日のあの失礼な男が引っ越し屋さんだったなんて。“最悪”の連鎖は確実に今日に続いていた。