2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- Prologue --**
「ごめん雪、急ぎの用事思い出したから帰る」
ワタシは合コンを壊す前に自分から帰ることにした。
「えっ?なに、聞こえない」
雪には聞こえなかったみたいだ。隣の茶髪のチャラチャラした男といい感じになっている。
「トイレ?」
雪は目を少し潤ませて、頬をほんのりピンクに染めて聞いた。
「うん、そう。じゃあね」
ワタシはバッグから飲み代のお金を出して、雪のそばに置いた。
雪はワタシのことより隣の男のほうが優先みたいで、お金は見ていなかった。
――1万もあれば十分。余ったら雪が使えばいい。
ワタシはその場をあとにした。
男にもお金にも執着心はない。未練だってさらさらない。特に男に関しては、その兆候は顕著なものだった。
仕事だって髪型だって、住む場所だって2年おきに変える、そんなおかしな女――小峯栞。
それが、桃原直貴に恋をする前のワタシだった―――…。