2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- other side Thirteen --**



「直貴、こっち向いて笑って?」


レンズ越しにそうリクエストされては、ニカッと笑うほかない。


カメラはいつも栞の右手に収まっていて、それがずっと俺を映すんだ。


ケータイの写真に続いての思い出作りの新しいアイテム・ビデオカメラ。


なんだか栞が遠くへ行ってしまいそうに感じるのは俺だけなんだろうか……?


そう思うたび、上手く笑えなくなりそうで怖かった。


少しくらい自分を映せばいいものを、栞は絶対に俺しか映さないんだ。


電話やメールでは“大丈夫”と言っていても、一緒にいてやれないときは心が折れそうになっているんだろう。


栞、いつもそばにいれなくてゴメンな……。


栞の引っ越しのとき、トラックの中で言ったことがあった。


「俺はあんたじゃないから分からない」


その栞にしか分からない“病気”という言葉では表現できない恐怖を、俺も感じることができればいいのに。


分かってやりたいと、今心からそう思う。
 

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