2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- Fourteen --**



「栞さんに言おうかどうか、1ヶ月以上悩んできたんですけど、でも考えても考えても俺にはこんな考えしか浮かびませんでした。雪や直貴みたいに受け入れられないんです……」


ヒデは泣いているんだろうか。
視界が歪んでよく見えないけど、目にかかる前髪が小刻みに震えていた。


「……ごめんなさい」


やっとかすかに動いたワタシの唇から出たのは、その言葉だけだった。


直貴にも、雪にも、
そしてヒデにも……。


3人に言えるのは、この言葉以外ワタシにはなかった。


「こういう考えてもあること、栞さんにも分かってほしくて……、すみません……」


ヒデはそう言って、コーヒー代を残して喫茶店を出ていった。


ドアの上に付いている年季の入ったベルの音が、ヒデが店を出たことを教えてくれた。


そこでワタシは、今までこらえていた涙が溢れだした。


その店で飲んだカプチーノは、舌にも鼻にも、体のどの部分にも全く感じなかった。


ただの涙の味だった……。
 

< 321 / 613 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop