2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- Fifteen --**



病室を出るときに、あの人はワタシに言った。


「それが君のためにも君の好きな人や大切な人のためになると思うのなら、僕は何も言わない」


ワタシは小さく頷いて、あの人の言葉を胸に刻んだ。


無理に諦めようとするから苦しくなる。だったら、気持ちに整理がつくまで想い続ければいい。


そう思うと、ヒデの言葉が素直に聞き入れられる。


気持ち一つ、心一つで、考え方次第で人って変われるものなんだと知った。


たぶん、あの日ヒデに言われなかったら、たとえ直貴とつき合っていても常にワタシは心の奥にモヤモヤを抱えたままだったと思う。


直貴の人生にほんの少しだけでも寄り添えてよかった。


ワタシの人生に、直貴や雪やヒデや、あの人――長坂さんが寄り添ってくれてよかった。


最後に少し甘えたいのは、この前渡されたあの通帳のこと。


実際問題、ワタシの貯金だけでは入院代も治療代も足りなかったから。


だから長坂さんに甘えて、あの通帳を使わせてもらうことにした。
 

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