2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- Fifteen --**
「ただ生きるだけなのに、嫌でもお金ってかかるものだね」
「それが人間に生まれた僕たちの性(サガ)だからね」
最後に冗談っぽくそんな会話をして、あの人の病院をあとにした。
部屋に帰っても、ワタシはちっとも泣かなかった。
むしろすっきりというか清々しいというか、そんな気持ちだった。そういうふうに思っている自分に逆に驚いたりもした。
今日まで肌身離さずつけていた、あのネックレス。
ワタシはそれを潰れかかったあの白い箱にそっと戻し、気が早いにも関わらず入院用のバッグの荷物の一番下に入れた。
ヒデの言葉のおかげで、前から心にあった靄(モヤ)がスーッと晴れていった。
直貴にだって、ワタシと同じように心に靄がかかっている。
バレンタインの日からだんだんにその靄がはっきりしはじめているのにワタシは気づいていたから。
だからワタシは、直貴の靄を晴らしてあげなくちゃいけない。
ほかの誰でもない、ワタシしかできないことしなくちゃいけない。