2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- other side Fifteen --**



「ワタシね、直貴に聞きたいことがあるんだ」


何分間かの沈黙のあと、相変わらず前を真っすぐ見ながら栞は話を切り出した。


「なに?」


俺は栞の顔を覗き込むように少し頭の位置を下に下げた。


「前の部屋から引っ越すときさ、ワタシ倒れて寝てたでしょ?実はそのとき、前の日に飲んだビールの缶を慌てて冷蔵庫に隠してたんだ。あれ、どうなったかなと思って」

「あ〜」


俺は3ヶ月前の記憶の糸をたぐり寄せはじめる。


「……確か、何か飲みたくて冷蔵庫を開けたら入ってて、一応捨てといたけど」


話す間も記憶の糸を紡(ツム)ぎながら、俺はそう答えた。


「よかった。ありがとう」

「うん」


――呼び出しの理由って、これじゃないだろうしな……。


俺は栞がなぜ寒い夜にここに呼び出したのかが分からなくなった。


ビールの缶の話なんて何も今することじゃないだろうと、頭の中に話の内容とシチュエーションとの違和感が浮かんできた。
 

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