2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- other side Fifteen --**
「もう十分なんじゃないかな。弟さんも満足だよ、きっと」
俺は返す言葉が何も見つからなかった。栞が呼び出した理由の核心に触れたような気がする。
「ワタシももう十分。見て、この顔。ちゃんと笑ってるでしょ?」
「……俺に先生になれって、そう言ってるのか?」
栞はニッコリと微笑みながらゆっくり1回頷いた。
でも、栞の弾けんばかりの笑顔を見ても俺は笑えなかった。
「夢を捨てちゃう人はいっぱいいるけど、直貴にはそうなってほしくない。過去にとらわれてちゃ前なんて見えないからね。これが自分の生きる道だっていうものがあるなら、そうしてほしい」
栞は再び真っすぐに前を向いて、そう言った。
「ワタシには夢がなかったから、ただ毎日を生き抜くことだけで精一杯だったから。だから叶えられる夢があるなら叶えてほしい。そう思ってるの」
栞の言葉はとても力強かった。
心の奥でまだくすぶっていた夢、俺はまだ完全には諦めきれていなかったんだ。