2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- other side Fifteen --**



“過去にとらわれてちゃ前なんて見えないからね”
“毎日を生き抜くことだけで精一杯だったから”


この2つの言葉が妙に引っかかってしかたがない。


栞は今、あの時言わなかった家族のことを言おうとしているのだろうか。


引っかかりはするけど、確証もないから何とも言えない。


俺は黙ったまま、栞の横顔から感じ取れる微かな心理をつかみ取ろうと神経を集中させた。


でも、次に発した言葉は、この話の流れからは想像もつかないことだった。


「直貴から卒業することにした」


――え……。


栞ははっきりとそう言ったのに、俺の耳にはうまく届かなかった。


衝撃的な言葉。
でも、心のどこかでは期待していたのかもしれない言葉。


「……ごめん、よく聞こえなかった」


本当にそう言ったのか、脳に到達して意味を理解するまでにはもう少し時間がかかりそうだ。


「直貴から卒業することにした」


栞はもう1度同じように言った。
 

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