2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- other side Two --**
「おはようございま〜す!」
「あ、桃原君、おはよう」
会社に着くと、もう事務の吉田さんが来ていた。
吉田さんは、俺たち社員の仕事の割り振りや電話対応、お給料の計算までなんでもこなす、頼れるおばさまだ。
社長が一番偉いけど、俺は密かに吉田さんが裏のボスなんじゃないかと思っている。
「桃原君、これが今日のお客様。このお客様はあんまり荷物も多そうじゃないから、あなた1人で担当してね」
そう言うと、吉田さんは俺に住所や連絡先、荷物の量などが書かれた書類を渡してくれた。
「了解です」
「あ、このお客様、例のお客様だからね」
「は〜い」
“例の”というのは、トラックに乗せて運んであげるという、1人で引っ越しをする人のことだ。
「伝票、できてるから忘れずに。それと、なかなかかわいい声のお客様だったわよ〜!桃原君と歳も近そうだし、話も弾むんじゃないかな?」
吉田さんは、意味ありげに俺にニコッと笑った。