2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- other side Eighteen --**



――栞に会いに行かなきゃ絶対後悔する。


そう思ったまさにその時……。


「どこ行くの?」


その声とともに、俺のシャツの裾(スソ)が後ろに軽く引っぱられた。


香織の声。
何かを感じたような香織の声は、俺に置いていかれるかもしれないという恐怖で震えていた。


俺は振り返ることができない。


「なかなか戻ってこないから。心配になって探しに来ちゃった」


裾をつかむ香織の手に力が入る。見えなくても、それは感覚で嫌でも伝わってくる。


「……ごめん。行かなきゃいけないとこができたんだ」

「……モトカノ?」


今にも泣き出しそうな声で香織は聞く。


「……違うよ。病気で入院してる友だちのとこ」


俺は嘘をついた。
もしも俺がピノキオだったら、鼻の先が見えないほどグーッと伸びているだろう。


だって俺は、この半年で嘘に嘘を重ねていたんだから……。


「……そう。じゃあ、気をつけて行ってきてね」
 

< 424 / 613 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop