2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- Nineteen --**
すると突然、ワタシの力の入らない手に直貴の手が重なった。
ワタシの右手に、直貴の左手が守るように重なった。
忘れかけていた直貴の体温が、熱いくらいにワタシの右手から全身へと回る。
「……今までいっぱいごめん。俺はもう迷わない。栞は俺が守る。もう遅いかもしれないけど……」
直貴はそっとワタシの手を握り、ポツリポツリと言葉を発した。
うれしいけど……。
もうすぐ死んでしまうワタシにはもったいない言葉だった。
“今さら……”という便利なフレーズが、ワタシの頭の中を縦横無尽に駆け巡る。
幻、幻想、幻覚、妄想……。
今ここにいる直貴の存在を打ち消したかった。
今起こっていることは全て夢の中の出来事だと思いたかった。
それでも、
否定の気持ちと肯定の気持ちが、出口のない迷路のようにぐちゃぐちゃにワタシの心をかき乱していく。
「……」
直貴の気持ちに応えようがないワタシは、ただ黙っていることしかできない置物だった。