2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- Three --**
「ぷはっ!本気になって怒ってやんの。バカだねぇ、小峯栞さん」
引っ越し屋さんの口車に乗せられてしまった。
「はぁ……」
ワタシはなんとか冷静になろうと長いため息をついた。
「小峯栞さん」
「はい、なんでしょうか」
「俺の名前は桃原直貴。桃の原って書いて“トウバル”って読む。“ナオキ”は素直の“直”に貴婦人の“貴”だ。覚えといて」
引っ越し屋さんは突然、自己紹介をはじめた。
「どうしてワタシが覚えなきゃならないわけ?」
――はぁ……。バカも休まず言われるとたまったもんじゃない。
頭がガンガンしてきた。
また熱が上がってガンガンしているんじゃない。
桃原直貴――あんたのせいでガンガンしてるんだ。
「だって俺はあんたの名前をフルネームで言えるんだ。あんただって俺の名前を覚えるくらいしてもいいじゃん」
桃原直貴はそう言った。
「あ、ちなみに歳は23。彼女なしのさびしい男。よろしく」