2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- One --**



ワタシは風を切って歩きながらケータイで時刻を確認した。


今日は11月22日。
午後11時22分。


――“いい夫婦の日”だって。しかも時間も“いい夫婦の日”。


最悪だ。
最悪の上に最悪が重なった。
“最悪”の最上級の言葉は……、今のところ見つからない。


今頃あの人は奥さんと“いい夫婦の日”を高級なレストランで祝っているんだろう。


そっちから手を出してきたくせにこういう時だけ“いい夫”を演じるあの人には、ほとほと愛想が尽きた。


たぶんワタシは、あの人の愛人よりはセフレのほうがイメージ的にしっくりくる女だったんだろう。


会うときはいつもラブホ。
一回ヤッたらあの人は奥さんが待つ家へと帰ってしまう。


そして、決まって最後にはこう言うんだ。


「妻とは別れる。もう少しだけ待ってくれ」


根も葉もない嘘なくせに。
恋人同士じゃないんだから、簡単に別れられるものじゃない。


そういうことをサラッと言わないでほしい。
 

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