2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- Twenty two --**



会話をするのも億劫(オックウ)で、頷いたり首を横に振るといったわずかな意志表現すら億劫で……。


ワタシは、3人の前では起きていても寝ているふりをすることもあった。


そういう寝ているふりをするときにかぎって、ワタシの耳に3人がすすり泣く声が聞こえてくる。


「栞ちゃん、辛そう……。あたしが代わってあげたいよ」


雪が涙声で言う。


――雪、雪には分からないほうがいいよ、この辛さは……。


ワタシは心で雪と会話をする。
今ではこっちのほうがずっと楽。しゃべると疲れるし、毒を吐いてしまうかもしれないから……。


「栞、ずっとそばにいるからな。心配するな」


直貴も涙声だった。


――心配なのは直貴のほうだよ。ちゃんとご飯食べれてる?


ワタシの手を握る直貴の手は、なんだか少し痩せたみたいだ。……ごめんね。


「友だちなんて無力なもんだな。何もしてやれることがねぇ……」


ヒデも涙声だった。
ヒデが泣くなんて想像できない。
 

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