2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- Three --**
「『引っ越し屋のあなたには関係ないでしょう。早く住所を教えてください』」
「“引っ越し屋にも主秘儀無がありますので教えられません。それに本人は寝ていますので了承の取りようがありません”」
「……」
どうやら桃原直貴は、あの人と自分とのやり取りを一人芝居しているみたいだ。
――超ウザいヤツ……。
「『私は小峯栞とつき合っているんです。それだけでは理由になりませんか?』」
「“残念ながら理由にはなりません”」
「『ハァ……。では正直に言います。小峯栞は私の愛人、つまり不倫相手です。彼女に別れてほしいと言われましたが諦めきれずに電話をしたという訳です。これで住所を教えていただけますか?』」
「“立ち入ったことをお聞きして申し訳ありません。ですがやはり教えることはできません”」
――フリン……。
アイジン……。
聞き慣れている言葉なのに、桃原直貴の口から出た言葉はワタシを凍りつかせる。
言葉も通じない国の言葉みたいに聞こえてならない。