2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- Twenty five --**
「そうね。幸せだった」
『そう思っていただけるのなら、私も幸せに思います』
そして、また沈黙……。
「じゃあ、行きましょうか」
気を取り直したワタシは、沼の精にそう提案した。
『いえ。最後にあなたを一番愛してくれる方へ、最期のごあいさつを……』
「え?」
『その方も覚悟はなさっていますよ。ですから、最期のごあいさつを』
「……いいよ。このまま行こう」
最期に見るのが直貴の泣いた顔なんて、切なすぎる。
“幸せだった”と言って死ぬだとか、人生をまっとうするだとか、そんなのはまだ死ぬ間際・本当に死ぬ寸前じゃなかったから思えたことだった。
いざとなると、このまま行きたいという気持ちがやっぱり勝つんだよ……。
『いけません。この私がお迎えに上がったからには、心から思い残すことなく天へ召されるように見届けさせていただきますよ?』
「はぁ」
『さあ、お行きなさい。蝋燭はまだ燃えておりますから、ご安心なさい……』