2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- other side
     Twenty five --**



父ちゃんの胸に顔を埋(ウズ)め、泣き続けた。


ヒデも雪ちゃんも母さんも泣いていた。父ちゃんだって、いつも厳格な父ちゃんだって、声を上げて泣いていた。


この場にいるみんながみんな、栞に対するそれぞれ思いで涙を流していた。


俺は栞を愛する者として……妻を愛する者として。


ヒデは栞の仲間として……。


雪ちゃんは親友として……栞がたった1人、親友だと言った人として。


父ちゃんと母さんは、2人の娘として……俺の妻として迎えた娘として。


それぞれの悲しみが、それぞれの胸を痛める……。


頭をもがれるような、
体を引き裂かれるような、
胸を切り刻まれるような……。


言いようも例えようもないこの苦しみは、ここにいる人たちにしか共有できないだろう。


大事に大切に思っている人――たった1人、愛を捧げる人がこの世を去ったんだ。


この気持ちは誰にも分かるまい。
誰にも分かってほしくない……。
 

< 599 / 613 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop