2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- One --**



ワタシは風を切って歩く。


立ち止まったりはしない。
あの人を想像しないように。
あの人を忘れるために。
自分をリセットするために。


こういう時、泣かないのがワタシの中でのルール。
強い女じゃないけど、1人で立てない女にはなりたくないから。


「待ちなって!」


遠くから低い男の声が聞こえる。どうせ彼女とケンカでもしたんだろう。


追いかけたいだけ追いかければいい。男も女も満足だろう。


「待てってば!」


どうやらこっちに近づいているみたいだ。どうぞワタシを追い越して行けばいい。


「あんた、歩くの速いのな」


でも、ハァハァと白い息をはいてワタシの肩をつかんだのは、色黒の長身の男だった。


「誰?」


ワタシは聞いた。


「この金、どう考えても多いと思うんだけど」


その男の右手には、確かにさっきワタシが置いたお金が握られていた。


「ああ、雪に餞別(センベツ)」


ワタシは適当に返事をした。
 

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