2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- Epilouge --**



目を閉じて木に体を預けてみる。


春の柔らかな日差しを全身に浴びる桜の木からは、栞を抱いているような温かさがあった。


前に俺は、栞はかぐや姫だと言ったことがあった。


あれは、いつかは終わりが来る、栞はいつかはかぐや姫のように月へ昇ってしまうって、そういう気持ちがあったから。


かぐや姫を育てた夫婦じゃないけど、俺は“その時”が来るのは分かっていても愛してやまないんだって、そういう気持ちをかぐや姫に例えたんだ。


栞の人生は、けして満ち足りたものじゃなかった。


俺に出会うまでの栞は、孤独の中に身を置いていた。


その孤独から救い出せたのかは俺には分からない。


分からないけど、少なくとも俺に宛てられた手紙の一文……


―『ワタシは“幸せだった”って言って笑って死にましたか?』―


とは違う結果になった。


愛されることの幸せと、愛することの幸せを知った栞は、俺を“愛している”と言ってくれた。


過去形じゃなく、現在形……。
 

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