2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- One --**



「餞別?」


その男は聞き返した。


「そう。あんた、餞別って意味、分かる?」


ワタシは逆に質問をした。
別に興味があったわけじゃない。


たいていワタシが期待する答えは返ってこないから、からかうつもりで質問をした。


「『転居・引っ越しなどをする人や遠くへ旅立つ人に、別れを惜しむ意を込めて金銭や物品を贈ること。また、その贈り物。はなむけ。』by国語辞典」


その男は得意気に言い放った。


「……正解」


ワタシは少し驚いた。
ちゃんと答えられた人を見たことがなかったから。


あの人だって簡単には答えられないと思う。


「じゃあ、その、雪って子が仕事辞めるとか引っ越しするとか、そんな感じで渡したんだ、この金」

「……まあ、そんな感じ」

「あんた、薄情なんだ」


その男は、ワタシの心にグサッとくることを平然と言った。


ワタシは薄情者だと言われる。協調性がないとも言われる。だからって、それを気にしたことはなかった。
 

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