2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- One --**



面と向かって言われるのと陰でコソコソ言われるのとでは、その種類が違う。


ワタシは、面と向かって言われるよりは、陰でコソコソ言われるほうがまだ傷つく程度が軽かった。


でも、一応ワタシも人間だ。
一人前に傷ついたり悲しかったりはする。


サイボーグでもないしセックスマシンでもない。ましてや仕事だけが生き甲斐の“仕事人間”でもない。


「薄情者のあんた、名前は?」


その男は、ワタシの心をグリグリえぐるようにまた“薄情者”だと言った。


「……」


ワタシは何も答えず歩きだした。


もうワタシには我慢ができなくなっていた。


知らない男にここまで言われて、怒らない人がいたら名乗り出てほしいくらいだ。


――最悪だ。こんな男に泣かされてたまるもんか……。


最悪だ。
最悪の上に最悪の最悪が重なってしまった。


今のところ、最悪の最悪の最悪にぴったりの言葉は思いつかない。


とにかく、最悪の気分だった。
 

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