2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
 
**-- Five --**



ワタシがそう言って、電話を切ろうとしたときだった。


「待ってくれ!栞の体のことだ」


思いもよらないあの人の大きな声と“体”という言葉にワタシの手は止まった。


――体?どういうこと?


ワタシは無言のまま、通話し続ける。


「……」


あの人もそう言ったはいいけど、電話の向こうでどう話したらいいか分からないようだ。


1秒1秒が重い……。
通話時間と電話料金だけが確実に正確に加算されていく。


「あ……、安心して。妊娠ならしてないから」


その無言の時間が嫌で、ワタシはあの人にも自分にも言い聞かせるようにそう言った。


「違うんだ。栞、僕と別れようって言ってから僕意外の人と関係を持ったことは?」


あの人の声は、今にも消え入りそうなほど小さかった。


後悔と絶望に満ちた声……、そんな声だった。


「……ないけど」


ワタシは出てきてもいない唾(ツバ)をゴクリと飲み込んでから、あの人の問いに恐る恐る答えた。
 

< 99 / 613 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop