2年おきの恋。-偶然と必然と運命と宿命-
**-- Five --**
ワタシがそう言って、電話を切ろうとしたときだった。
「待ってくれ!栞の体のことだ」
思いもよらないあの人の大きな声と“体”という言葉にワタシの手は止まった。
――体?どういうこと?
ワタシは無言のまま、通話し続ける。
「……」
あの人もそう言ったはいいけど、電話の向こうでどう話したらいいか分からないようだ。
1秒1秒が重い……。
通話時間と電話料金だけが確実に正確に加算されていく。
「あ……、安心して。妊娠ならしてないから」
その無言の時間が嫌で、ワタシはあの人にも自分にも言い聞かせるようにそう言った。
「違うんだ。栞、僕と別れようって言ってから僕意外の人と関係を持ったことは?」
あの人の声は、今にも消え入りそうなほど小さかった。
後悔と絶望に満ちた声……、そんな声だった。
「……ないけど」
ワタシは出てきてもいない唾(ツバ)をゴクリと飲み込んでから、あの人の問いに恐る恐る答えた。