愛するほどに狂おしく
滑稽な日常
長期の海外出張。
本当は、傍にいたい人がいた。
本当は、傍にいてほしい人が。
けれどその人はいつも近くにいなくて。
目覚めると隣にいるのは君だった。
「優里、ごはんできてるよ〜」
まだ眠い目をこすりながら窓から差す光に顔を向ける。
誠……。
じゃなくて。
「優里〜?遅刻するよ〜?」
「あ、うん、すぐ行く!」
理だった。
実の旦那は海外でいないのに、日本にあるこの家に私と、そして旦那の弟の二人で暮らしている。
この不気味な共同生活は気づけば半年、続いていた。
誠より7つ、私より5つも年下なのに、それを感じさせないほど大人で、なによりふとした瞬間に誠と瓜二つの表情を見せる理から、私は離れなれなくなっていた。
「おはよう」、「いただきます」、「ごちそうさま」、「いってきます」、「いってらっしゃい」、「気をつけてね」、「頑張ろうね」、「ただいま」、「おかえり」、「お疲れ様」、「ごめんね」、「ありがとう」。
そして、「愛してる」。
そんな簡単で短い言葉を、あなたと交わしたいだけだった。
私が料理をしているのを、あなたが遠くのソファーから眺めていてふと目が合ったら微笑み合う、それだけでよかった。
そしてそのささやかな毎日さえないのが現実で、私はあなたの夢を見ながら眠り、君と現実世界で理想を実現させる。
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