愛するほどに狂おしく
誰か私を覚えていて
私が療養から戻り、帰宅して家事をこなせるようになると、いつもの日常が返ってきた。
そんなある日、私は手を滑らせて皿を割り、それで手の甲を誤って切ってしまった。
パリンッという音に、理が飛んでくる。
心配してくれているのに、どこか不服な自分に、今まで感じたことのない違和感を感じていた。
それから私は、自傷が止められなくなった。
リスカは当たり前、ODもした。
一生残るアザが付くほど自分を殴ったし、拒食にもなった。
何日も帰らない日もあれば、家で一歩も動けない日もあった。
私には、海外からわざわざ飛んできてくれたあの出来事が快感だったのだ。
また心配されたい、私のためだけに飛んできてほしい。
その一心だった。
でもそんなことをする度、自分がとてつもなく幼稚でくだらなく思え、ドクンドクンと波打つ心臓はまるでお前はなぜ生きているのかと、私が生きる価値を否定しているかに思えた。
そしてついに、私は動脈に手を出した。
遠のく意識の中で、私のために何人の人が泣いてくれるかしらと考えて涙が出た。
愚かに流れる真っ赤な液は、心とは裏腹に温かくて私をどんどん染めていった。
私は二度と目覚めることのない眠りに落ちた。
答えは見つかっていたようで見つからないまま。
人の世では理とのがうんと距離は近かったけれど、私は思う。
例えばこんなふうにいなくなった私を見たら、天国から私のために蜘蛛の糸を垂らしてくれるのが理で、地獄でもいいからと一緒に落ちてくるのが誠らしいそれぞれの優しさだったのではないかと。