しかし兵器は少女である
立ち上がった給仕は肩をくすくす揺らしながら、シーツを物干しにかけた。

パン、パン、と小気味よく布の左右を持ってしわを伸ばし、バスケットの中のシーツをまた取り出す。

その合間合間に、くすくすくすり、肩笑い。

なにがおかしいのか、わからない。

猫がいるというのは、そこまでおもしろいことなのだろうか。

わからない。

けれども、もしかしたら、あの猫を捕まえたなら、もっとおもしろいのではないかと思い立つ。

「捕まえる」

と私は立った。

「捕まえるというのは、その猫ちゃんを、ですか?」

猫ちゃん?

なぜ愛着を示す呼称を末尾につけるのだろう。

わからないが……猫は、猫だ。うなずく。

「捕まえる。捕まえて、お前に見せる」

「ふぇっ、わたくしにですかっ?」

横隔膜の突発的な痙攣――しゃっくりのように、給仕の肩が跳ねた。

その動きは、おかしみからではないと、思う。

意味もなく、誇らしげになった。

「捕まえる。ここで待っていて。お前に必ず見せる」

「…………」

「待っていて」

「……はい、お嬢さま」

朝からあたたかな日差し、そして白いシーツのような給仕の明るい笑みを見、私は再び走り始めた。
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