しかし兵器は少女である
勢いよく駆け出したはいいものの……

白猫は足が速かった。一度見失っては、またどう追いつけばいいのか。

居所も、見当がつかない。

しかし、諦めたくない。

高みから探そうと考え、跳んだ。

屋敷のベランダまで一歩で足をかけ、さらに踏みつける。

屋根のへりを掴み、体を反転させて、着地する。

ワンピースの裾が、長い長い赤髪が、靡いた。

余韻を膝で吸収し、体をまっすぐに、立つ。

お祖父様の屋敷は、こうして見れば、広かった。

私がいたケースの中とは、比べようがない。

およそ屋根の高さから見渡せるすべて、地平線すら縁取る緑の庭園が、ここの敷地。

広い。

私ひとりでは、あるいは迷ってしまうかもしれない。

一瞬、これほど莫大な世界に自分がいるかと思うと、その小ささに、身が震えた。

私は、なんという世界に、いるのだろう。

が、世界はこの庭よりも、さらに、もっと、ずっと、いっぱい、たくさん、すごく、広いらしい。

私はまだ、まだ知らないことが多い。
< 6 / 23 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop