知らない彼が襲いにきます
それからの数日は慌ただしく過ぎ去った。


まずは母の葬儀の準備。


これは想定していたことだったが、思いもよらなかったのが、父が「使用人を全員解雇する」と言い出したことだった。


資産をすべて事業につぎ込んで多額の負債を抱えたブラッドフォード家には、もはや使用人に報酬を支払う余裕すらなかったのだ。


私はさすがにここまでの事態とは思っておらず、次から次へと舞い込む不幸にただただ呆然とするばかりだった。


葬儀では領民たちが集まり、聡明で優しかった母の死を悼んだが、もう帰ってくることはない。


私は教会の最前列で涙をこらえていた。


母はもういないし、信頼できる使用人たちもみんなこの屋敷を去ってしまった。


残されたのは私と、粗暴な父の二人きり。


こんな時、エヴァンがいてくれたらどれだけ救われることか。


しかし、今や彼がどこにいるのかすら分からないのだ。


これから私は、どうやって過ごしていけばいいというのか。


少なくとも、まともな生活など期待できないのは確かだだろう。


そしてその予想は、現実のものとなった――。
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