知らない彼が襲いにきます
その日の深夜。


私は質素なぼろのワンピースの上に、これまたつぎはぎだらけのぼろのコートを羽織った。


数日前まで着ていたような、おしゃれなワンピースはもうない。


父が少しでも生活費を手に入れようと私の服を全部売り払い、代わりに安物の古着を買ってきたためだ。


もっとも、服を売って得た金もすぐに彼の酒に消えてしまうであろうことは容易に想像できるが。


私はため息をつきながら、コートのフードを目深にかぶった。


エヴァンを探しに行くとき、私はいつもこうしてフードやケープをかぶっている。


自分が領主の娘であるということが街でばれないようにするためだ。


領主の娘がしょっちゅう街へ出ては男を探しているとなると、よからぬ噂も立つだろう。


そのため、私は常に何らかの方法で顔を隠さねばならなかった。
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