知らない彼が襲いにきます
「ね、ちょっと、ちょっと待って、これは駄目……っ」



未婚の私だって、この先起きるであろうことは想像できる。


さすがにまずいと思って拒絶の意を示したが、彼には関係ないようだ。


お構いなしというように、顔を近づけ、唇を重ねてくる。



「……あ」



途端に、どくんと脈打ち、熱を持つ体。


冬の流行り病にかかった時のように気だるく、頭にもやがかかる。


全身がくすぐったいようなもどかしいような――甘い苦痛。


これは絶対に、ただのキスではない。


何か、魔力を含んでいるような。


私は、目の前で微笑みを浮かべる彼を、熱に潤んだ瞳で見た。
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