知らない彼が襲いにきます
すべてが終わり、初めての感覚にぐったりとした私の身体を、彼は優しく撫でる。


私を見つめる深緑色の瞳はどこまでも穏やかで、「あなたが愛しい」とすら告げているようだ。


もちろん、それもどうせ淫魔の魅惑の術のひとつに過ぎないのだろうけど。


そう分かってはいても、激しくも優しい彼との行為に、私は正直幸福感を感じていた。



しばらく私の隣で腕枕をしてから、彼は窓から羽ばたいて去っていった。


結局、一言も喋らないまま。


淫魔は、みんなあんなふうなんだろうか。


噂では、言葉巧みに女性を褒めて喜ばせると聞いていたけれど。



何はともあれ――私はひどく疲れていた。



深く考えることもせず、その日はまぶたを閉じるとすぐに眠ってしまった。
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