知らない彼が襲いにきます
「私……なんであんなこと」



後悔がどっと押し寄せてくる。


なぜ、見ず知らずの彼に魅せられてしまったのだろう。


淫魔に簡単に騙されてしまうほど、私のエヴァンに対する思いは浅いものだったということなのだろうか。


自分で自分の考えていることがわからず、混乱して、私はベッドの上に突っ伏して泣き出した。



もう、エヴァンのことは諦めるしかない。



ただでさえ、十歳も年上の彼に恋愛対象として見てもらえるかどうか不安だったのに、私が婚前に処女を失ったとなれば、さすがの彼も私を軽蔑するだろう。


いや、軽蔑しなかったとしても、こんな穢れた自分を差し出すわけにはいかない。



「エヴァン……」



私は彼の名をぽつりとつぶやいた。


もう、結ばれてはいけなくなってしまった彼の名を。



彼のことは、諦めよう――。



ずきずきと痛む心を抱えながら、私はそう決めたのだった。
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