知らない彼が襲いにきます

縁談

「リリアーヌ！」


父のだみ声で、私は目を覚ました。


まだ朝日が昇ったばかりで、外は薄暗い。


私はうなりながら目をこすり、こんな時間に何事かと階下に降りていく。



「お父様……どうなさったの？」



寝ぼけまなこの私の肩をつかみ、父は目を輝かせてこう言った。



「喜べ、リリアーヌ！お前に縁談が舞い込んだぞ！」



ここのところ常にむすっとした顔で酒をあおるように飲んでいた父が、今日はやたらと機嫌がいい。


彼の話の内容は、こうだった。


――私に結婚を申し込んだのは、ここから馬車でおよそ十時間ほどの距離の都市に住むマクレガー子爵。


年齢は五十を越えるという。


そして、彼の出した条件は、私をめとる代わりにブラッドフォード家の借金をすべて肩代わりするというものだった。