知らない彼が襲いにきます
私は慌てて言葉を付け加えた。



「あなたのことが嫌いなわけではないの、本当よ、でも私にはあなたより大切な人がいる、それだけで……」



駄目だ、自分が何を言いたいのかわからない。


混乱し、わけもわからずにただ言葉をまき散らすばかりの私を、彼はぎゅっと抱きしめてくれた。


その温度は、切ないほどにあたたかい。


私は瞬き、目を伏せる。



「どうして……」



――どうして、あなたは私にそんなに優しくするの。


しかしその疑問は、しかし口にするのははばかられた。
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