知らない彼が襲いにきます
淫魔は淫魔、しょせん魔物でしかない。


人間とは違うのだ。


魔物の気持ちを聞き出そうだなどというのは愚かな試みだし、そもそも無口な彼が答えてくれるはずもない。



「だからね、これでお別れなの。……恋人ごっこも、悪くなかったわ。さようなら」



私が無理やり話を切り上げると、彼は全てを理解したかのように頷き、それ以上私に触れることも、振り返ることもせずに窓から羽ばたいて去っていった。


私の胸が、ずきりと痛む。


彼のことなんて、好きじゃないはずなのに。


この胸の痛みの正体は、一体何なのだろうか――。
< 39 / 54 >

この作品をシェア

pagetop