知らない彼が襲いにきます
「エヴァン、エヴァン。大きくなったらね、私エヴァンのお嫁さんになるの」



「嬉しいお言葉です。ありがとうございます、お嬢様」



幼き日のやりとりを思い出す。


キスをしてくれなきゃ嫌だとだだをこねた私に、彼は「貴女がレディになられた時には」と指切りをしてくれたっけ。


あんなものはその場限りの約束でしかないのかもしれないが、私は子供だましの彼の言葉を、素直に信じていた。


いや、今でもまだ信じている。


だから、人に話したら馬鹿みたいだと笑われるかもしれないが――彼が執事をやめてしまったのには何か大きな理由があるはずだ、その原因さえ解決すればまた彼は私のもとに来てくれるはずだと、再会の日を待ち続けている。
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