知らない彼が襲いにきます

「それで……使った資産はいくらなの？」



母が震える声で問いただし、父の肩を揺さぶる。


父は気まずそうに視線を逸らし、それから搾り出すようにして答えた。



「資産全てを使って、この領地と引き換えに借金もした……」



「まあ！」



メイドが両手で口を押さえ、私はくらくらと目眩がした。


今までだって失った資産は億単位だが、今回ばかりは桁が違う。


土地の統治についてよく理解していないこの私にも、父が何かとんでもないことをしでかしたのだということが分かった。


しかし、一番ショックを受けたのは母のようだ。


母ははっと息を呑み、それからその場に崩れ落ちるように倒れてしまったのだ。



「お母様！」