苦しくて、愛おしくて
自分の心にさえ強がらなければ平静を保てないほど、あの当時私は全てに気を張っていた。
濁って変色した体操服を水道場でゴシゴシ洗っていたときは
惨めで、悔しくて、腹立たしくて
何も関係ないグラウンドで部活に励む周りのみんなを、遠くから睨んだ。
夏ごろから始まったそれは
初めは軽いシカトからだったけれど
今ではこんなことまでされるようになった。
原因はとっくに聞いている。
“奈央さ、みゆが斎藤先輩のこと好きって知っててなんで告白されるようなことしてんの??”
“陰でぶりっこしてるって斎藤先輩言ってたし”
“マジ最低。そこまでして男に好かれたいの?”
テストで大事な箇所は覚えたくてもすぐ忘れちゃうのに、どうしてこんなどうでもいいことは、一語一句正確に記憶に残っているんだろう。