苦しくて、愛おしくて
凛だけなら多分飛ばせば間に合うだろうけど、そんなん知ったこっちゃない。
今月遅刻しすぎて、あともう一回遅刻をしたら居残り課題という罰が用意されていたのだ。
「今自転車パンク中なの!
取り敢えず送ってって!」
通過しようとする自転車の荷台を引き止めると、スクバで凛の脇腹を殴る。
「いっ」
凛が顔を歪めるように痛がるのを無視して、そのスクバを無理やり前カゴに詰めた。(凛のスクバを下にして)
そして慣れた動作で荷台に跨ると、ペダルをローファーでコンコンと蹴って合図を送る。
「『取り敢えず』の使い方無茶苦茶だろ」
「時間ないから早く!!」
「うるせえ何寝坊してんだよ」
「おまえもな!」
ひとしきり言い合いを交えると
「…チッ」
観念したような凛の舌打ちに、勝ったと私はほくそ笑む。