苦しくて、愛おしくて
「てか早く行きな! 遅刻するじゃん!私が!」
「お前がかよ」
「じゃあね、気をつけてね!」
遠ざかっていく自転車の中、ひらひらと手だけ優雅に揺れる。
後ろ向きに歩きながらも、凛の背中が見えなくなるまで見送ることはやめなかった。
よし、私も急ご。
タタタタッとローファーの音を鳴らして昇降口へと駆け込んで行く。
高校2年の秋。
小学校5年生の面影は、最近ではめっきり見えなくなってきたくらい、凛は成長期真っ只中。
そして今年は受験生の年だった。